MAツールの導入を検討する5ステップと失敗しない5つのポイント
マーケティングオートメーション(以下、MA)は、企業のマーケティング活動や見込み顧客育成の効率化に欠かせないツールです。
ただ、自社に必要な要件や機能を整理せずに申し込むと、ツールの機能を持て余したり、十分な成果が得られなかったりなどのリスクがあります。そこで本記事では自社にあったMAツールを検討する方法やポイントを解説します。
なお、ナイルではMAツールの導入から活用まで幅広く支援しています。ぜひお気軽にご相談ください。
MA(マーケティングオートメーション)の導入・活用にお悩みの方へ
目次
MAツールとは
MAとはMarketing Automationの略で、企業のマーケティング活動を自動化する仕組みのことです。このMAの実行手段として利用されるのが「Hubspot」に代表されるMAツールです。
MAツールは、顧客が「どのページを見たか」「どのメールに反応したか」などを一人ひとり記録して、それぞれの興味や関心度合いをスコア化(点数化)。そのスコアをもとに、顧客ごとに適したメッセージやコンテンツを自動で選定し、メールなどで送信することができます。
結果、顧客は自分にとって役立つ情報をタイムリーに受け取れるため、購買意欲や満足度が高まり、企業はサービスの販売や商談獲得がしやすくなります。
MAツールを活用することで、企業はマーケティングリソースを節約しつつ、リードの質の向上や、売上増加につなげることが可能です。
下記の記事でもMAツールの概要を詳しく解説しています。導入メリットや選び方について興味のある方は、ぜひご確認ください。
MAツールが必要とされる背景
【参考】CEB社「The Digital evolution in B2B Marketing」より「MLC Customer Purchase Research Survey, 2011」をもとに作成)
現代の顧客は、商品やサービスを購入する前にインターネットでほとんどの検討を済ませてしまいます(上図)。従来のセールスによる情報提供の機会は減少しており、ウェブマーケティングの重要性が相対的に高まっています。
しかし一方で、ウェブマーケティングの業務範囲は膨大かつ煩雑なため、なかなか担当者が人力で回すのには難しさがあります。その上、経済状況の変化や市場の縮小などによって、企業は生産性の向上や人件費の削減をより重視するようにもなってきています。
このような背景から、マーケティングの実施とコスト削減を両立できるMAツールは広く必要とされるようになりました。
CRM・SFAとの違い
なお、MAツールとよく似たマーケティングツールに「SFAツール(営業支援システム)」と「CRMツール(顧客関係管理システム)」があります。それぞれ区別をしておきましょう。
まず、MAツールがカバーするのは、主にリード(見込み顧客)の獲得や育成です。企業はMAツールを使って顧客の興味や行動に基づいてスコアリングを行い、それぞれに適したコンテンツを配信することで、顧客を商談・購入に導きます。
続くSFAは、営業プロセスの効率化に特化しています。商談から契約に至るまでの営業活動の追跡や管理を行い、営業チームの生産性を向上させるのが目的です。
最後に、CRMは受注前後の顧客関係の管理に焦点を当てています。CRMツールで顧客の購入履歴やコンタクトのログを一元管理し、適切なフォローアップやリピート促進を検討する材料とします。
このようにMA、SFA、CRMは扱う領域が異なります。違いを正しく理解した上で、どのツールを導入していくのか検討しましょう。
MAツールが検討される4つの理由
ここからはMAツールが検討される主な4つの理由を紹介します。
MAツールが検討されるの4つの理由
理由1 契約前の顧客情報を集約するため
まず1つ目が契約前の顧客情報を集約するためです。
MAツールを使えば、ウェブサイトや電話での問い合わせや、展示会での名刺交換など、さまざまなチャネルで集めた契約前の見込み顧客(=リード)情報を集約して管理ができます。リードごとにどのようなコンテンツに関心があるのかなどのデータも併せて管理できるため、後述する見込み客の育成や、受注確度の判断といったマーケティング業務を迅速に進められるようになります。
理由2 見込み顧客の育成のため
2つ目の理由が見込み顧客(リード)の育成のためです。
BtoB向けの商品やサービスは、BtoCのような個人の消費とは異なり、組織の意思決定を経て購入されるのがほとんどです。そのため、多くの場合において、複数の決裁者の承認が必要で、購入決定までの期間が長くなります。
マーケティングにおいては、この長い検討期間でいかに顧客との関係を維持し、意思決定の支援を行い、購入に向けて前進してもらうかが重要です。(この顧客の育成をするマーケティング施策を「リードナーチャリング」と呼びます)
MAツールがあると、顧客の属性や行動履歴を追跡したり、パーソナライズされたコンテンツを提供したりといったリードナーチャリングのプロセスが劇的に効率化されます。
下記の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
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理由3 受注確度の高い見込み顧客抽出のため
リードナーチャリングを進める過程で、特に購入意欲が高いと思われる顧客を特定する必要があります。(「リードクオリフィケーション」と呼びます)
MAツールがあると、セミナーへの参加や資料のダウンロード回数などのスコアを基にリードクオリフィケーションを効率的に行えるため、どのリードに商談のアプローチを優先的に行うべきかが判断しやすくなります。
この購入意欲が高い顧客リスト(ホットリスト)を抽出できると、効率的なクロージングができるため、営業リソースの無駄がなくなります。これが理由の3つ目です。
理由4 マーケティング施策の成果分析のため
理由4つ目は、成果の分析のためです。
効果的なマーケティングには、施策の成果を分析し、改善点を見つけるための継続的な評価が不可欠です。MAツールは、メールの開封率やリンクのクリック数、コンバージョン率(CVR)などの重要な計測基準を参照できます。
これらのデータを基に、マーケティング活動の効果を定量的に分析し、より効果的な戦略の策定が可能です。
MAツール検討時の導入の流れ5ステップ
ここからは、MAツール検討時の導入の流れについてお伝えします。
MAツール検討時の導入の流れ5ステップ
ステップ1 自社の課題を洗い出す
MAツール導入の第一歩は、自社が直面している課題の明確化です。具体的な課題がMAツールで解決できるかを検討する必要があります。
例えばリード育成できていない課題を、MAツールのコンテンツ自動送信で解決できそうであれば導入価値があると判断できます。しかしそもそも「コンテンツが用意できていない」などの場合にはMAツールよりもコンテンツ制作に予算をかけたほうが賢明です。
具体的な課題解決の手段として問題なく機能するか検討し、ほかの選択肢と比較するようにしましょう。
ステップ2 ナーチャリングのフローを整理する
MAツールを効果的に活用するには、リード化から成約までの流れを整理すること(ナーチャリングのフロー)が重要です。過去に成約した顧客のケースを参考に定義しておきましょう。
具体的には、以下のようなポイントです。
- 顧客がどのような経路で自社と接触し、リード化したか
- どのタイミングでどのコンテンツと接したか(LP閲覧、ウェビナー参加など)
リードに成約に向けて前進してもらうためには、どのようなコンテンツやメッセージをいつ案内すると効果的かを整理しておくイメージです。
また、整理をするだけではなく、実際にMAツールによってどこを自動化できそうか、他に何ができそうかといった改善の機会も探します。一例としては以下のとおりです。
- 顧客の反応に応じたフォローアップメール設定
- ダウンロード内容に応じたお礼メールの送信
- 顧客の利用年数に応じたコンテンツの配信
このステップを踏むと、リードナーチャリングのプロセスが明確になり、MAツールによるマーケティング効率の向上がスムーズに実現できます。
ステップ3 自社に必要なナーチャリングのフローを設計する
ステップ3は、具体的なナーチャリングのフローの設計です。
ステップ2で整理したプロセスや問題点をもとに、具体的にどんな機能を持ったMAツールが必要かを考えます。例えば、メールマガジン会員登録後に問い合わせまで進むリード顧客が少ない場合、以下のようなフォローアップができるツールを探すのが有効です。
- 自動ステップメールを使って過去の人気コンテンツの配信ができる
- 初心者向けコンテンツに関心が高い人へ、入門ウェビナー動画を案内する
MAツールの機能は提供元によって異なります。使いこなすためにも、自社に適したツールを選ぶことが重要です。利用したい機能が複数ある場合は、優先順位を持っておくと導入がスムーズになります。
ステップ4 導入するMAツールの候補を集める
次に行うのが、導入するMAツールの調査です。ここまでの要件に従って、ウェブ検索や展示会などで自社のニーズに合致するツールをリストアップしましょう。
高価で多機能なものもありますが、必ずしも多機能=すべての企業にマッチするとは限りません。予算も考慮しつつ、必要な機能をカバーできるツールを選ぶのが大切です。
こちらの記事で有名なMAツールを8つ紹介しています。ぜひ参考にしてください。
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ステップ5 MAツールを決定する
最後に導入するMAツールを決定します。MAツール会社が提供しているデモ環境で実際に触ってみたり、営業担当の話も聞いたりしつつ「費用感」「使いやすさ」「サポート内容」「評判」などをもとに、自社に適したツールがどれかを判断をしましょう。
どう判断したらいいか悩んだときは、下記のような「比較表」を用意するのもおすすめです。優先度も盛り込みつつ、候補を並べて検討することで、どのツールを導入すべきか判断しやすくなります。
項目 | 優先度 | ツールA | ツールB | ツールC |
費用感 | 高 | ◯ | △ | X |
機能 | 高 | △ | ◯ | ◯ |
使いやすさ | 高 | △ | △ | ◯ |
サポート | 中 | X | △ | ◯ |
評判 | 低 | X | ◯ | ◯ |
MAツールの検討で失敗しない5つのポイント
ここからはMAツール検討で失敗しないためのポイントを紹介します。
MAツールの検討で失敗しない5つのポイント
ポイント1 設計を十分に行っておく
上述したようにMAツールの導入では、自社のニーズや目標に合った設計が不可欠です。明確な目的設定や課題の洗い出し、ターゲット設計など、自社のビジネス目標やマーケティング戦略に基づいてツールをどう活用するかを綿密に設計しておきましょう。
実際に、設計が明確だと、目標達成に向けてどうMAツールを使うべきかも明確になるため、迷わずMAツールの活用が進むようになります。
可能であれば、目標をKPIで持っておくのがおすすめです。効果の検証まで一貫して管理ができるようになります。下記で詳細に解説しますのでぜひご覧ください。
ポイント2 自社のリソースを確保しておく
MAツールはシステム導入がゴールではありません。当たり前ですが導入後、効果的に運用する必要があります。
そのためには、以下のような社内リソースの確保が不可欠です。
- ツールの操作を理解し、活用できるスキルを持った人材
- ツールを使ってマーケティング業務を回す時間や労力
従業員がツールを利用できなければ、MAツールはその潜在能力を十分に発揮できません。適切に運用出来るよう、トレーニング時間も考慮しつつリソースを確保しておきましょう。
ポイント3 利用中のツールとの連携も確認しておく
すでに社内で利用しているツールとMAツールの互換性・連携の可能性も事前に確認しておきましょう。
例えば、営業支援ツールやチャットツールなど、ほかのシステムとスムーズに連携できるMAツールを選ぶと、業務の効率化とデータ管理の一元化が可能です。結果として、新しいツールを利用する心理的ハードルが下がり、マーケティング活動の改善に集中して取り組みやすくなります。
また、併せてセキュリティ要件も重要な検討事項です。MAツールは顧客の個人情報も取り扱います。データの安全性やプライバシー保護のため、ツールのセキュリティ機能も十分に確認して判断するようにしましょう。
ポイント4 ベンダーのサポート体制を確認する
MAツールの導入と運用は、複雑で専門的な知識が必要です。例えばステップメールの作成や設定などは、具体的なマーケティング施策の運用経験がないと難しいと考えられます。
サポートの有無や内容はベンダーによって異なるため、サポート体制は事前に確認しておくようにしましょう。特にマーケティング経験が少ない企業では、研修や教育プログラムを提供するベンダーを選ぶと安心して導入や運用を開始できます。
ポイント5 スモールスタートを意識する
MAツールは高機能であるほど、その運用が複雑になりがちです。そのため、導入当初はスモールスタートを心がけ、小規模なプロジェクトから始めましょう。
例えば、簡単なメール配信から始めて、その効果を確認しながら徐々に適用範囲を広げていくイメージです。複雑なシステムを最初からフルに活用しようとすると、運用の難しさにより期待した成果が得られないリスクがあります。スモールスタートにより、従業員もツールに慣れ、効果的な運用方法を学ぶことが可能です。
よく検討される代表的なMAツール「HubSpot(ハブスポット)」
引用:HubSpot
参考として有名なMAツール「HubSpot(ハブスポット)」を紹介します。
HubSpotはマーケティングや営業、カスタマーサービスが一体化し、ユーザーフレンドリーな操作性と高度なカスタマイズ性が特徴で、その多機能性と使いやすさで多くの企業から選ばれています。リアルタイム分析により戦略の迅速な見直しができるため、中小企業から大企業まで幅広く対応できます。
例えば以下のような機能が備わっています。
機能 | 概要 |
マーケティングハブ | ブログやLP作成機能やコミュニケーション機能、トラッキング機能といったマーケティング全般に関する業務に対応 |
セールスハブ | 顧客情報やコミュニケーションの管理、テンプレート化などに対応 |
サービスハブ | 顧客とのやり取りの一元化やその優先順位付けに対応 |
CMSハブ | ブログやLPに関するコンテンツの管理に対応 |
オペレーション・ハブ | 他のアプリとの連携し顧客データを整理&統合に対応 |
HubSpotの具体的な特徴や機能はこちらの記事をご覧ください。
MAツールの検討は目的から逆算しよう
本記事では自社にあったMAツールを検討する方法やポイントを解説してきました。
MAツールは、単に機能性や価格だけで選ぶのではなく、自社のビジネス目標やマーケティング戦略にどのように適合するかを基準に考えましょう。
繰り返しお伝えしているように、MAツール成功の鍵は、目的を明確にし、最適なツールを逆算して選ぶことです。MAツールの導入や活用にお悩みの方は、ぜひこの記事を参考に検討してはいかがでしょうか。
なお、ナイルではMAツール選定やMA導入後のお悩み、マーケティング課題のご相談を受け付けております。「自社にMAツールは本当に必要なのか」「どのツールが適切なのか」などでお悩みの方は、以下からお気軽にご連絡ください。
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