採用サイト成功の秘訣とSNS活用術|ベイジ枌谷氏×ナイルTV
本記事では、採用サイト制作に強みを持つ株式会社ベイジ代表の枌谷氏をゲストに迎え、採用サイト成功の秘訣とSNS活用方法をお伺いしました。前編は、採用サイトのメリット、成功する採用サイトに必要な視点と置くべきコンテンツについて解説。
最後は、KPI設定など、採用担当者が気になるよくある質問にもご回答いただきました。ぜひ最後までご覧いただき、採用サイトの見直しにお役立てください。
目次
ベイジ枌谷氏×ナイルTV対談動画
ナイル株式会社 執行役員 マーケティングDX事業本部 デジタルマーケティング事業部 事業責任者
ゲスト解説 枌谷 力氏
株式会社ベイジ 代表取締役
1997年にNTTデータ入社。2001年にウェブデザイナーに転職。2007年にフリーランスとして独立した後、2010年に株式会社ベイジ設立。2021年にクラスメソッド株式会社のCDO(Chief Design Officer)にも就任。20年以上東京在住だったが、2022年4月から福岡に移住。
採用サイト/採用オウンドメディアを作るメリット
ナイル株式会社 岸穂太佳(以下:岸)
早速ですが、はじめに採用サイト・採用オウンドメディアを作るメリットについてお伺いできますか?
株式会社ベイジ 代表取締役 枌谷力氏(以下:枌谷氏)
採用サイトは、「求職者に対して自分の会社の魅力を提供する」という行為ですよね。採用サイトやオウンドメディアを作らない場合、転職サイトやWantedlyなどのプラットフォーム、採用イベントへの参加といった方法がありますが、お金を出して自分たちを露出させる方法しかありません。
そうなると、プラットフォームや転職サイトのフォーマットにある程度合わせないといけない、といった制限が生まれます。Wantedlyの場合は、もう少し自由度が高いですが、その中でもアルゴリズムやルールに従う必要はあります。
一方で、自分たちで採用サイトを作れば、際限なく自由に発信できる。ここが最大のメリットじゃないかと思います。
岸
ベイジさんのサイトも採用に向けて工夫されて作られていますよね。実際、自社サイト経由の応募者はどれくらい来るんですか?
枌谷氏
広告媒体を一切使わない、採用サイトだけのオーガニックなエントリーでいうと、平均年間100名ほどでしょうか。もちろん採用枠を絞る年もあるので、去年は80名ほど、その前は140名ほどあったかと思います。
岸
やはりこれだけ多くの応募者が来るのは、採用サイトからの認知なんでしょうか?
枌谷氏
実は、採用サイトって2014年頃からほとんど変えていなくて、今年リニューアルしようと思っているんですよ。それでも多くの応募が来るのは、やはりSNS等による露出の多さじゃないかと思いますね。
もう一つの理由は、オウンドメディアとして運用している「日報サイト」です。日報サイトというのは、社員が日報を社外に向けて発信するサイトのことです。弊社の場合、この日報サイトが採用オウンドメディアに近い役割を果たしています。
なので、SNSと日報サイトが応募者の認知に効いている実感がありますね。
採用サイト成功の秘訣とポイント
採用サイト立ち上げ時にやるべきこと
岸
では実際、採用サイト立ち上げ時に気をつける点はありますか?
枌谷氏
求職者に話を聞くことですね。正しくは「元求職者に話を聞くこと」です。
これまで様々な企業の採用サイトを制作してきた中で、すごく大きな課題だと思うのが制作会社と人事採用担当者だけで話していて、そこに求職者の声がないんですよね。「自分たちの魅力をどう表現するか」だけ話し合っていて、求職者が求めている情報を検討せずに採用サイトを作っているケースがとても多いんです。
そうすると、変にアニメーションにこだわった映像コンテンツですか...?(笑)みたいなサイトが出来上がってしまう。結局、一番重要な求職者が求めている情報がのっていない採用サイトになっている。こうならないように、まず「求職者の意見を聞くこと」が大事です。
顧客獲得のマーケティングの場合は、顧客の声を聞くことが大事ですが、採用も同じ。実は、1番良いサンプルは社内にいるんですよね。
特に2〜3年以内に入社した社員は、元求職者です。自分が転職活動していたときの心理をまだ覚えているので「こんな気持ちでサイトを見ていた」「こうして欲しかった」というリアルな声を聞くことができます。
岸
たしかに、求職者視点がなくなると、どうしてもサイトデザインをかっこよく見せたいとか、自分たちをよく見せたいといった一方的な想いが全面的に出てしまいがちですよね。
何名くらいにヒアリングすると良さそうですか?
枌谷氏
ヒアリングは、アンケートとインタビューの2パターンあります。アンケートは、全体の傾向を見るためにやりますから、会社全体で取れる数を取るのが良いでしょう。ミニマムだと10名、社員数が多ければ100〜120名ほど取ったケースもありますね。
インタビューは一対一で話を聞くという形で、3〜5名くらいでしょうか。重要なのは、「こういう人を採用できたら嬉しい」という、ロールモデル社員をピックアップすることです。その人自身の心理や、実際に会社のことを知った上で「こう見せるのが良いよ」といったことが言える人ですよね。
一対一で深掘りしていくことと、全体の傾向という2軸で行いましょう。インタビューだけだど、その人だけが思っている可能性があるので、アンケートも合わせて実施することで、集団と個と両方の話を聞いて間の意見を反映させることが重要です。
中途採用と新卒採用はサイトを分けるべき?
岸
採用サイトを立ち上げる際に、中途採用と新卒採用で見せ方や設計は変えていますか?
枌谷氏
これは時と場合によりますね。運用コストの観点では、中途と新卒で分けると、会社や事業說明といった共通コンテンツは、二重運用になっていくわけです。
またユーザー視点でも、中途向けの情報を新卒が読みたくないかと言うと、意外とそうではないですよね。どんな企業から転職した先輩がいるのか、どんな上司がいるのかといった情報は、魅力に映るかもしれません。なので、基本的には分けずに中途、新卒採用は統合した方が良いとは思っていますね。
ただ、最終的には採用人事の方針に従いますので、新卒専用採用サイトを制作する場合もあります。
採用サイトリニューアルのベストタイミング
岸
よく弊社もご相談いただくのが、サイトリニューアルのタイミングなんですが、採用サイトの場合、どのように判断するのがベストですか?
枌谷氏
やっぱり事業側の必然性が一番大きいのではないでしょうか。人材獲得に注力したいタイミング。例えば、事業成長を加速させたいとか、新規事業立ち上げといった事業が変化するタイミングが一つです。
もう一つが、競合との採用獲得競争で、劣勢を強いられている実感がある場合です。例えば、競合に人材を取られている、内定辞退が続いている時です。このような場合、採用サイトに限らず、自分たちの価値・魅力・便益をどう訴求していくかを考えていく中で、その内容をしっかり採用サイトにも反映させる必要がありますよね。
こうしたタイミングで、リニューアルを検討するといいかなと思います。
岸
採用においても、競合のサイトを把握することは大事ですよね。
枌谷氏
そうですね。求職と商品を買うという行為は、ほぼ一緒だと思っています。商品を買う場合は、自分の便益を満たすためにお金を出して商品サービスを買います。就職転職は、自分の人生やキャリアにおける欲しい便益を手に入れるために、会社を買うのではなく入社するんです。
商品にはお金を投じますが、就職は時間を投じる。でもロジックは、商品購入と全く一緒です。だからこそマーケティング視点で考え、競合という考えが必要になってくるわけです。
採用サイトに必要なコンテンツとは
岸
では続いて、採用サイトのコンテンツについて聞いていきたいと思います。会社概要や社風がわかるものだと思うのですが、枌谷さんのコンテンツづくりのポイントはありますか?
枌谷氏
やはり定番は、お仕事紹介のインタビューコンテンツですよね。それ以外で置いた方がいいものは二つあります。一つ目は、「私たちの会社に入社するメリット」というコンテンツです。要するに、求職者の立場に立ったときに“自分が会社に入るメリットは何か”をはっきりと書いたコンテンツです。
よくあるのは、「当社で働けばやりがいがあります!」「生き生きと働くことができます!」と書いてるのですが、だから何なの?という話なんですよ(笑)。
伝わない人が一定数いるコミュニケーションスタイルではなく、はっきりと求職者の人生やキャリアにとって与えられるメリットを言語化して載せることが重要です。例えば「私たちの会社に入る8つのメリット」みたいなコンテンツを置くことです。
もう一つは、他社にないコンテンツです。本質的には、他社にはない採用・人事制度を作っておくことで「この会社は他の会社と違うから入ろうかな」という気になりますよね。この要素が採用サイトにもあると、引っ掛かりになると思います。
例えば、弊社の場合は下北沢に拠点があるんですが、下北沢のランチ情報を載せています。求職者と関係ないと思うかもしれませんが、実際入社するとなると、働くのではなく生活することになるんですよね。あとは、「私たちの失敗経験」という社員が失敗した話を載せています。こういった、他社があまり出していない情報を出すことで、コンテンツでしっかりと個性を出せるんです。
「この会社ユニークだな」みたいな、“この会社ならでは感”を演出するコンテンツを、必須コンテンツのプラスアルファとしてまぶすことは、理想的じゃないかと思います。
採用サイトよくある質問
うまくいく採用サイトの運用パターン
岸
採用サイトも成果が出るまで時間が必要ですよね。運用を上手く進めるためのアドバイスって何かありますか?
枌谷氏
やっぱりトップが了承をコミットしているかどうかが一番重要ですね。トップがやらなきゃいけないと強く言っている場合、それ以上の説得コミュニケーションは要らないんですよ。
逆に、トップが「うまくいくの?」「成果どうなの?」とかちまちま言ってくると(笑)
色々な制約が加わって、結局発信できないとなってしまいます。
あとは、コンテンツ単位での成果は見ないですね。ある一定の失敗と成功が混在するメディアという前提で行うことが大事です。
採用サイトのKPIは?立ち上げ期間はどれくらい?
岸
なるほど、採用サイトのKPIってどのようなものを置いた方がいいとアドバイスされてますか?
枌谷氏
KPIの候補は5つあります。エントリー・書類選考・面接・内定・入社この5つに絡む指標です。この5つのどこにボトルネックがあるか突き止めた上で、どこの数字を引き上げたら採用課題が解決するかに焦点をあてKPIを決めると良いのではないでしょうか。
岸
採用サイトを作るうえでの、理想の期間ってどれくらい設けますか?
枌谷氏
私は経営者なので、「そんなの1、2ヶ月でオープンしなよ」「6ヶ月もかけないでよ」というお客様の気持ちは、めちゃくちゃわかります(笑)。
一方で制作側の気持ちとして、焦って作ってしまうとやはり軸がブレていたり、本来の会社の魅力が表現できていなかったり、コンテンツはあるのに他社との違いがわからないといった状況を生みかねないので、結局はバランスよく進めていくしかないと思います。
3〜6ヶ月くらいの間で行うのが妥当じゃないでしょうか。もし3ヶ月でやる場合は、最低限のコンテンツをまず出して、じっくり煮詰めたものを徐々に出していく方がいいですね。
採用サイトで作ったコンテンツは、採用ピッチ資料やSNSに転用できるんです。じっくり質の良いコンテンツを作れば、そのあと数年かけて転用できます。なのでこの1.2ヶ月急ぐよりも、もう少し先を見越して作った方が結果的に経済合理性が高いと思います。
後編は、採用におけるSNS活用について解説してますので、こちらも合わせてご覧ください!
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